プールの迷路の夢

いつもの銭湯に来たら体育館ぐらい広かったとか、家がものすごく高い建物になっているとか、そういう夢を見ることがある。自分はこのたぐいの夢が大好きだ。見た中でも一番良かったと感じたのが、プールサイドの迷路の夢。

夢の中で自分は、自分の背より少し高い、水色のペンキで塗られたコンクリートの壁に囲われて立っている。頭上にはまぶしい夏の空が見える。斜めに射す太陽光が、水色の壁に直線的なコントラストの境界を描く。

壁の中は迷路のように入り組んだ通路になっていて、足元を消毒するプールや、目を洗う蛇口、シャワーなどが迷路の各所に、ぎこちなく配置されている。迷路といっても、困るほど広くはないらしい。歩いていくと、あっさり出口が見つかった。外には砂浜が広がっていて、遠くには海と白い灯台が見えた。

来た通路を戻る。肝心のプールはどこにあるんだろうと考えたとき、通路の隅に、きれいな水がちょろちょろと流れる溝を見つけた。流れに手を差し入れてみると、冷たかった。かすかに塩素の匂いがした。これがプールなんだ、と納得した。

この夢は2度見たことがある。いつだか幼い頃に一度見て、ふと思い出してまた見たいと考えていたら、もう一度だけ見られたのだ。しかし、そのことを意識するとすぐに夢から醒めてしまった。

自分は、死んだら夢としてではなく実際にあの場所に行けるんじゃないかと、少しだけ根拠もなく期待している。全てが終わったら、またあの静かな日陰の迷路で、思う存分、あの冷たい水に触ようと思っている。